星の銀貨


作文

-04話 おうじさまとおひめさま!のウワサ


 これは虹天銀河ができるまえ、
悪魔も天使も互いを信じることができなかったころの
おはなしです。

 むかしむかし、とあるゾーンに、
ちいさな天使属の村がありました。

 そのゾーンは最近になって開拓されたばかりでしたが、
村ではたいへん美しい金銀がびっくりするほど採れました。
 そのため毎日がお祭りのようににぎやかで、
村の人たちはとても豊かな生活を送っていました。

 ただ、そんなに裕福な村にも、幸せな人ばかりが
暮らしているわけではありませんでした。
 結婚して2年が経つのにもかかわらず、
どうしても子供が授からない夫婦があったのです。

 もちろんこの村にも
子供のない家はたくさんあったのですが、
この夫婦は結婚する何年も前から
「かわいい子供といつまでも幸せに暮らしたい」
 と口癖のように話していたので。
 それも、そのときの笑顔が
とてもうれしそうにきらきらと輝いていたので。
 今のように、子供ができないことで
落ち込んでいる顔を見てしまうと、
村のみんなはなんとなく、
さみしい気持ちになってしまうのでした。

 誰もうまく慰めることはできず、かと言って
何かをしてあげることもできませんでしたが、
みんな一生懸命に
夫婦を元気付ける方法を考えていました。
 しかしやはり、どうしてあげることもできませんでした。
 そのため村にはすこしずつ、すこしずつ、
悲しい表情だけが広がっていったのでした。

 ある、星のきれいな晩のことでした。
 雲ひとつない夜空から、
一羽の大きなコウノトリが村へと舞い降りてきたのです。

 大きいといっても並大抵の大きさではなく、
村のなかで一番立派な2階建ての長老の家よりも
はるかに迫力のあるコウノトリでしたので、
村の人は誰もそばに近づくことができませんでした。

 しかし、これといった危険を
感じることもありませんでしたので、
村のみんなはその場で固まったかのように
コウノトリを見上げていたのです。

 そんな村人たちをよそに、
石造のように堂々とそびえ立つコウノトリへと
走ってゆく人影がありました。

 そう、あの夫婦です。
 夫婦は少しも恐れを見せずに、
コウノトリのそばへと足を進めていったのでした。

 実は夫婦がコウノトリに近づいていったのには
理由がありました。
先ほど、ぐうぜん空を眺めていた婦人が、
舞い降りてきたコウノトリの首に
ゆりかごのようなかたちのバスケットが
掛けられていたのを見つけたのです。

 夫婦はまるで、これからなにが起こるのかが
わかっているかのように、
怖がることも、少しもためらうこともなく
コウノトリへと向かっていきました。

 コウノトリも、夫婦が現れるのを見ると
バスケットを差し出すかのように
その首を地面すれすれまで下げました。

 コウノトリの首にぶらさがっていたバスケットは
大人がひとり収まるくらいの大きさでしたが、
夫婦とコウノトリは
ぴったり息を力を合わせているかのように動いて、
手際よくバスケットをはずしました。

 婦人が感じていた通り、
ゆりかごのようなかたちのバスケットの中では、
生まれたばかりであろう赤ちゃんが
すやすやと眠っていました。

 赤子はふたりが結婚したばかりのころ
「きっと、こういう子が生まれてくるだろうね」
と笑顔で語り合い、ふたりで夢に見た
赤ちゃんの姿そのものでしたので、
ふたりは今までのうれしかったことや、
楽しかったこと、悲しかったことなどを思い出し、
嬉しさと懐かしさのまじった涙を
ぽろぽろと流したのでした。

 夫婦が喜んで子供を迎える様子を
見届けたコウノトリは「うん、うん」と
満足したかのような優しい表情でうなずくと、
大きな羽を広げ、西の方角へと飛び去っていきました。

 夫婦をはじめ、村人たちは
夫婦に神から子が授かったと大喜びです。

 さっそく村の人々は今日この日のために
特別な宴を開きました。
 みんな夫婦がこれから幸せになっていくことを願い、
心の底から祝福しました。

 するとどうでしょう。
宴は始まったとばかりだというのに
婦人がとても幸せそうな顔で笑ったのです。

 村人が婦人のやわらかい笑顔を見るのは
何年ぶりだったでしょうか。
 それを見た誰かが「これはめでたい!」
と大きな声で叫ぶと、宴はさらに盛り上がり、
夫婦が家に戻って休んだ後も、朝まで止まりませんでした。

 宴会からの帰り道。かすかな星明りの下、
夫婦はさずかったばかりの赤ちゃんを
やさしく見まもりながら家へと歩いていました。

 今日から婦人はお母さんに、
夫はお父さんになったのです。

 さて、これからどうしようか、
とうれしそうに二人が歩きながら話し合っていると
突然、赤ちゃんが目を覚まし、
二人ににっこりと笑いかけました。 

 夫婦は、赤ちゃんの目に釘付けになりました。

 赤ちゃんの両目が、
とてもきれいな青い色をしていたからです。
瑠璃のような青い瞳のかがやきは、
わずかな星明りの下でも、
はっきりと見てとれるほどでした。

 あまりにも深くてきれいな色の瞳でしたので、
青い色の中で一番に高潔な色の名前を、
お母さんは男の子に与えたのでした。

 男の子は夫婦のもとですくすくと成長し、
あと何日かで4歳の誕生日を迎えようとしていました。

 男の子はすこしだけやんちゃでしたが、
家の手伝いや人助けをすすんでする、
心根のやさしい子に育っていました。

 ただ、もうすぐ4歳になるというのに、
男の子には天使のつばさが生えてきませんでした。
 天使属にとって、それはふしぎなことでしたが、
羽で飛ぶのは疲れますし、長いあいだは飛べませんし。
それに、生活に不便なことはありませんでしたので、
男の子も、村のみんなも気にすることはありませんでした。

 そして男の子の4歳の誕生日の夜。
4年前と同じ星のきれいな晩に、
夫婦のもとに女の子が生まれました。

 そう、男の子はお兄ちゃんになったのです。

 生まれてきた赤ちゃんを見て、
お父さんとお母さんはとてもおどろきました。

 赤ちゃんの目が、男の子と同じくらい
印象的な赤い色をしていたからです。
珊瑚のような赤い瞳のかがやきは、
わずかな星明りの下でも、はっきりと見てとれるほどでした。

 あまりにも鮮やかで美しい色の瞳でしたので、
男の子のときと同じように、
赤い色の中で一番に気高い色の名前を、
お母さんは女の子に与えたのでした。

 女の子が生まれてからは、
男の子は以前にもまして
家の手伝いを進んでやるようになりました。
 進んで妹の子守りも引き受けましたし、
いじめっ子退治なんかもするようになりました。

 また剣術や武術の才能は
村の男の人たちをはるかにしのぐほどでしたので、
村のひとたちは「これは将来が楽しみだ」
「ゼウス様の後継者だな」などと口をそろえて
男の子に期待をよせていました。

 でもそんなとき、決まってお母さんは
「あの子の未来は、あの子が自分で決めるんですよ」と、
しあわせいっぱいのえがおでこたえるのでした。

 そして、そんなことがあった晩は、
ねむりにつく前の男の子を、ぎゅぅっと
やさしく抱きしめるのでした。

 おかあさんは、男の子がいつか
大きな力に巻き込まれてしまうのではないか。
 そのときには、男の子がどこか遠くへと
連れ去られてしまうのではないだろうか。
 ずっとそう、予感していたのです。

 でも、そんなことに全く気付いていない男の子は、
大好きなお母さんの、すみれ色の髪から香る
花のようなにおいの中で、幸せなきもちのまま
ねむりにつくのでした。

 やがて女の子も元気に成長し、
男の子は色々なところで妹にかまうようになりました。

 お父さんとお母さんがいないときに見守るのも。
 ひみつのかくれ家へつれていくのも。
 夜、ねる前に本を読むのも。

 ぜんぶ、男の子はよろこんで行いました。
妹ができたことが、男の子にはとてもうれしかったようでした。
 女の子もやさしいお兄ちゃんが大好きで、
「おにいちゃん」と呼びかけながら、
いつも男の子の後ろを追いかけていました。

 村の人たちは仲の良いふたりの姿を見るたびに、
なんとなく、幸せな気分にひたっていたそうです。

 そんなここちよいくらしのなかで、
兄妹の時間はそっと、やさしく流れていきました。

 男の子が生まれてからちょうど8年、
女の子が生まれてから4年がすぎた夜。
 やはり、星のきれいな晩のことでした。

 あの夜と同じ雲ひとつない夜空から、
一羽の大きなコウノトリが村へと舞い降りてきたのです。

 そう、あのときのコウノトリでした。

 もう誰もコウノトリを怖がりません。
8年前とはちがう表情で、村人はコウノトリを迎えました。
その中には、男の子と女の子の姿もありました。
 ”しあわせ”を運んできたコウノトリのおとぎ話を、
ふたりは赤ちゃんの頃から聞かされて育ったのです。

 コウノトリがその様子を見て、
ふっ、と優しくほほえんだように見えた次の瞬間、
コウノトリの羽が、つぎつぎに抜け落ちていきました。

 そして、羽がすべて地面に落ちたのと同時に、
コウノトリの皮がぼろぼろと、
まるで漆喰のように崩れはじめました。

 羽も皮もなくなってしまったコウノトリ。
いえ、コウノトリであったものは、
ドクロの顔をした死神の姿をしていました。

 あまりの恐ろしさに、村の人たちはにげだしはじめました。
みんなががわれを忘れてにげてしまった中で、
兄妹はコウノトリの前に取り残されてしまいました。

 まだ幼かった女の子は死神の姿を見て、
気を失ってしまっていたのでした。
男の子だけでは女の子を運ぶことは出来ませんので、
せめて女の子を守ろうと、逃げずにいたのでした。

 男の子はなんとかして
女の子を助けることができないかと考えていました。
おかしな村の様子に気づいたお父さんとお母さんも
子供たちを心配して、慌てて家から飛び出してきます。

 しかしふしぎなことに、
死神は誰もおそおうとしませんでした。
手にもった鉈(なた)や、
ドクロの杖をふりかざす気配もありません。

 何も起こらないことが気になったのか、
村人たちもおそるおそる死神のところへと
様子を探りに戻ってきました。

 いつの間にか、空は黒い雨雲におおわれていました。
次第に雷まで鳴りはじめ、
村はぶきみな雰囲気に包まれはじめました。

 そして、そんな空に、
死神よりもはるかに大きな王様の姿が映りました。
 突然表われた王様の姿に、みんなは不安を抱きました。

 空に映った王様が手に持っている杖をかざすと、
突然、男の子と女の子の体が
電撃のようにバチッ、バチッ、と光りはじめました。
 その電光は、ふたりの間をつなげようとするかのように
互いの方へと伸びていきました。

 そして伸びていったふたつの光がバチッ、
とつながった瞬間、
気絶している女の子の体がひとりでに浮きあがり、
すこしづつ、すこしづつ、
男の子の体へと取り込まれていきました。

 あまりのできごとに、だれもかれもが我を忘れていました。
男の子でさえ、自分たちに何が起こっているのか
理解することもできていませんでした。

 女の子が男の子の体の中にすべて溶け込まれ、
完全に消えてしまったとき、
男の子の体が太陽のように、白く光を放ちはじめました。
 そしてその光はだんだんと大きくなって、
ゾーン全体へと広がっていきました。

 やがて広がりきった光は男の子のもとへと戻ってゆき、
かわりに男の子の背中からは
虹のように輝く、光のつばさが生えました。
 そして背中のつばさから徐々に光がはがれてゆき、
それは黒い、コウモリのつばさとなりました。

 誰もが、言葉を失ってしまいました。
 男の子の背中に生えたつばさ。
それはまぎれもなく、悪魔属のものだったからです。
 男の子も突然背中に生えてきたつばさに戸惑い、
現実を拒絶するかのように、目を強くつむりました。

 しかし、現実は男の子を容赦しませんでした。
「星悪魔よ、目覚めたか……」
 空に映る王様は、追い打ちをかけるように
男の子に告げました。

「ちがう!」その言葉に、男の子は耳をふさぎ、
必死になって王様の言葉を否定しようとします。

「そのつばさこそ、破壊のしるし。星悪魔のあかしだ……」
 そんな男の子に対して、
王様は残酷にも、淡々とありのままを語ります。

「ちがう」自分が悪魔だなんて。
そんなことを、信じることなどできるはずがありません。
 男の子はありったけの声を張りあげます。
「俺は、天使だ!」
 そして男の子は両目をかっと見開き、
「父さんと母さんの家族だ!」と、
力を振り絞ってさけびました。

 その悲しさ、怒りに応えるかのように
背中のつばさは空に大きく広がったると、
ものすごいスピードで前へとひるがえり、
その動きで大きな突風を生みだしました。

 あまりの風の強さに地面はえぐられ、
木々は全て、根元から倒れました。
 あの大きな死神も、あっという間に空高く飛ばされ、
影もかたちも見えなくなりました。

 村の人たちはただ、呆然と立ち尽くしていました。
いったい今、何が起こったのか。
落ち着いて判断することもできなかったのです。

 だれもが言葉を失っているなか、
王様は静かに男の子に語りかけました。
「そうだ、それでよい……
その破壊の力で、世界を滅するのだ……」
 空から放たれた不気味な言葉は、
よどんだ空気の中で、何度も何度も反響しました。

 やがて王様の姿も空から消えてゆき、
村にはどす黒く曇った夜空だけが残りました。

 いまだ気味の悪い、王様の声が残る村に、
男の子はひとり立ち尽くしていました。
 妹が消えてしまったこと。自分に起こったこと。
なにもかもを認めることができなかったのです。

 男の子はまるで夢の中に、
それも、とてもおそろしい悪夢のなかにいるような
ここちになっていました。

 でも、きっと。夢からさめれば、きっと――。

 それでも、現実は夢にはなりません。
コン、と頭の後ろに硬い小石があたったことで、
男の子は現実へと引き戻されました。

 小石は頭だけでなく、背中にも、ふたつ、みっつと、
コンコン、コンと次々にぶつかってきました。

 はっとした男の子がうしろを振り向きますと、
村のひとたちが男の子に小石を投げているのが見えました。
さらにみんなはこわい顔で男の子をにらみつけ、
「この、悪魔め!」と大きな声でののしりはじめました。

「ちがう、俺は悪魔じゃない」
男の子はみんなに分かってもらおうと訴えますが、
誰も、男の子の話など聞いてはくれませんでした。
 それどころか投げられる小石の数は次々に増え、
みんなの顔は鬼のようになり、
男の子への暴言もだんだんと大きくなっていきました。

 飛んでくるたくさんの小石のせいで
男の子はほとんど前を見ることができませんでした。
 それでもなんとか話だけでも、と男の子が思ったとき、
視界のあいだに、倒れているお母さんの姿が映りました。

 男の子に対して石を投げる村の人たちの中で、
お母さんは気を失っているかのように倒れていました。
 そんなお母さんの姿に重なって、男の子の頭には
ついさっきまでの楽しい夕食の光景と
その時のお母さんの笑顔がうかびあがりました。

 やさしくて、だいすきなお母さん。
 でも、今は。

 男の子はぎゅっ、と目を伏せると
村に背を向け、逃げるように空へと飛び立っていきました。

 夜が明けました。
 ゾーンを覆っていた雲も消え、
遠い東の空からは、太陽が顔を出しはじめていました。

 一晩中森の中を走りつづけていた男の子は、
たまたま見つけた湖のほとりへと降り立ちました。

 夜が明けたばかりのせいか
湖には男の子以外、動物の姿すらありませんでした。
また、波が起こらないためか
朝日をうける水面は静かにきらきらと輝いていました。

 男の子が水を飲もうと湖に顔を近づけると、
真っ赤にはれたまぶたや、どろだらけの頬が
水面にはっきりと、まるで鏡のように映りました。

 その映った顔をみたとたん、
男の子は全身から血の気が引いていくような
感覚に襲われました。

 湖に映った自分の片目が、赤く輝いていたのです。
 まるで妹の瞳のような右目の色は、昨夜のできことが
すべて現実であったことを証明しているかのようでした。

 恐ろしさのあまり、
男の子は湖から逃げ出そうとしました。
 しかしなぜか、体はまったく動きません。
それどころか、どんどん湖の中へと引き込まれて――。

 夜も完全に明け、陽の光もあたたかくなったころ。
 先ほどの湖のほとりに、赤い髪の女の子が
ひとりですやすやと気持ちよさそうに眠っていました。

 そこに突然、空から
一羽の大きなコウノトリが舞い降りてきました。
 コウノトリは女の子に近づくと、
まるでバスケットを差し出すかのように
その首を地面すれすれまで下げました。

 そしてコウノトリは翼を上手に使って、
首に提げたバスケットの中に
眠ったままの女の子をゆっくりと乗せていきました。

 バスケットの中で女の子が
幸せそうに夢を見ている様子を見つめたコウノトリは
「うん、うん」と
満足したかのような優しい表情でうなずくと、
大きな羽を広げ、西の方角へと飛び去っていきました。

作成日:Christian Era 2005 14th May

長ぇんだよ!!(#゚Д゚)=○)`Д)、;'.・

 アズ―ルは自分のことを「作られた存在だ」って言ってましたけど、
私は絶対そんなことないと思います。
確かにアズールを取り巻く出来事なんかは操作されていたのかもしれませんが、
記憶を含めて心自体を操作されてたなんてちょっと信じられません。

 だってそうじゃなきゃ、あんなに一所懸命にコーラルの事を
大切にしていたことに説明がつかないですよ……残念!!(誰を斬ってんですか)
 なんてことを考えながら書きました。

 4月11日から書き始めて、書き終わるまでに1月以上かかりました。
 童話調って本当に難しいですが、この話はどうしても童話調で描きたかったので
七転八倒、四苦八苦しながら書き進めました。
 そんな中でも、親切な方々からのアドバイスのお蔭で、いい物が作れました。

 これから書いていくアズールの話は、この話が軸となります。
お付き合いいただける方はゼヒv

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