星の銀貨


作文

48.7話 言えなかった言葉、すれ違う言葉!のウワサ


 OBゾーンの最奥にある謎多き伝説の谷は、深い霧に包まれていた。
 青白く光るビックバン・コア。血の色に輝くダークマター・コア。
2つのきらめく宝玉は、誰もが踏み入れることを許されなかった世界への鍵だった。
「紛れもない時のあかし……異界の扉を開く……」
 声の主が告げるままに、扉の奥へと進んでゆく古代遺跡。
足を踏み入れた先に彼らが見たものは、空を包み込むほどの巨大な繭(まゆ)。
 突然、コントロールが効かなくなったゼウスの古代遺跡は、
吸い寄せられるかのように繭へと突き進んでゆく。
 加速する遺跡。迫りくる繭。両者は必然に衝突し、彼らの意識は止まった。

 光のない空間の中で、アズ−ルは意識を取り戻しつつあった。
(あれから、どれぐらい経ったんだ……?)
 徐々に明るくなる景色。
やがてハッキリとした視界の中で、アズ−ルは古代遺跡の天井を見た。
 仰向けの状態から、アズ−ルは起き上がろうとする。
「うっ、」
 しかし、空に伸びたのはアズ−ルの左腕のみで。
 動かない右半身に気付いたアズ−ル。ふと顔を横に向けると、
アズールのとなりに、カンジーが横たわっているのが見える。
 カンジーはアズ−ルの右腕にしがみついた状態で気を失っていた。
 呆気にとられるアズ−ル。目をぱちぱちとさせて。
 一瞬が経つと、落ち着いたアズ−ルは自由な左手を使って
カンジーの手首を持ち、腕をゆっくりとほどく。
 カンジーはアズ−ルの右腕から離されていくごとに、顔をしかめる。
表情は時折、不安を帯びたものとなる。
 アズ−ルはその表情を見ながらも、手を動かすのを止めずに。

 そして右腕から離れたカンジーの手をそっと地面に放して立ち上がり、
古代遺跡の出口(コクピット?の部分)へと歩きはじめる。
「アズ−ル……さん」 
 途中で、カンジーの声が聞こえて。
 はっ、と振り向くアズ−ル。しかし声の主はうつ伏せに倒れているままで。
 アズ−ルはホッと息をつき、遺跡の出口へと歩を進めようとする。
そこに、カンジーの声が聞こえて。
「アズ−ルさん……ありがとう……ございま……す」
 (ここからアズ−ルの顔は映さない)アズ−ルの足の動きが止まる。
 しかし止まったのは一瞬だけで。再びアズ−ルは出口へと歩きはじめる。
一歩一歩と、その足取りは変わらずに。
 やがて外の景色が見渡せる場所に着くと、
アズ−ルは小さな声で、そっとつぶやいた。
「ごめん、母さん……」

 遺跡の外には、無数の糸が織り成す小さな宇宙が広がっている。
彼らはかの伝説に語り継がれし聖域、アラクネの谷へと辿り着いたのだった。

作成日:Christian Era 2005 14th August

 うわー数カ月マトモに更新してなかったら、
書き方を忘れてしまっていたらしく、小説調で書いてしまっていました。

 んまあそんなことはおいといて。
 今回のお話は「なぜ、カンジーはアズ−ルのことを嫌っていたのか?」
という考えからはじまりました。

 だって不思議じゃないですか?
今までカンジーは(アズール以外の)たくさんの悪魔や魔守と出会ってきたのに、
彼らに対しては「悪魔であること」を理由とした非難を行わなかったのですよ。
 それなのに、アズ−ルの存在だけは必死で許否しようとしているんです。

 あまりにも不思議すぎちゃってたものですから、
牧波さんはついついカンジーの気持を考えてみてしまいました。

 結論から先に言えば、
カンジーはアズ−ルにお礼を言いたかったのだと思います。
放火魔人に囚われたときに、自分を救ってくれて「ありがとう」と。
 でも、カンジーには言えなかったんですね。

 理由はもちろん、アズ−ルが悪魔属だからです。
アズ−ルが自分の親友を殺した絶メッ鬼と同じ悪魔属だから。
 もし自分がアズ−ルに「ありがとう」と言ってしまえば、
自分は「親友を殺した悪魔属」とわかりあうことになってしまうからです。

 親友が信じていた。でも親友を殺した、悪魔属とわかりあうこと。
これをカンジーは「親友の命を否定してしまうこと」だと考えたのでしょう。

 そしてさらに、カンジーは反対のことも考えていたはずです。
 「親友を殺した悪魔属」を嫌悪すること。
これは「親友が信じようとした悪魔属」を悪と決めつけることだと。
即ち、「親友の心を否定してしまうこと」だと、カンジーは考えたはずです。

 「命」を肯定しようとすると、「心」を否定してしまう。
でも「心」を肯定しようとすると、今度は「命」を否定することになってしまう。
 カンジーはこうして、親友の「命」と「心」の間で悩んでいたのでしょう。
 だからアズ−ルに対して「ありがとう」と素直になれなかったのだと思います。

 カンジーは35話「カンジー危機一髪!のウワサ」をきっかけにして
アズ−ルの呼び名を「アズ−ルさん」に改めました。
しかし、完全に素直になれたかなというと、そうでもないような気もしまして。
 だから今回はカンジーに、心に隠してある事を、寝言で暴露してもらいました。

 アズ−ルに関しては、牧波さんオリ設定の過去の事を引きずっています。

 はじめはこの話で、アズ−ルを過去の呪縛から解き放ってあげてもイイかな
と思ったのですが、この後の51話「武装翔束タケル!のウワサ」にて
アズ−ルが自身の存在に苦悩する箇所があったため、
心苦しいですが、アズ−ルにはまだ苦しんでもらうことにしました。

 ここまでおつき合いしてくださっている方、ありがとうございます。
牧波さんはスランプ(注:牧波さんに関しては、やる気無しの状態を言う)
を越えて、この話を書ききることができました。
 次界卵編ではあと3話分を書く予定です。
よろしければ是非、おつき合い戴きたいと願っております。

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