星の銀貨


作文

51.5話 未来への目覚め!のウワサ


 コントロールされた意識を解放されたのも束の間に、
実体化したカリスマデビルの手に囚われたカンジー。
「必ずデビルを倒して、天界リフォームを……っ!」
 必死の抵抗も空しく、デビルの掌から溢れ出たカオスに呑み込まれてしまう。

「カンジー!!」
 怒りのあまり、デビルへと突き進んでいくタケル。
 だが攻撃しようとした瞬間に武装翔束が消え、片手で薙ぎ払われてしまう。

「コーラル、ぜんぶ思い出したよ」
 御神籤仙人の神社にて、タケルの傷を癒すコーラル。
「タケルちゃん、あとはお兄ちゃんが助けてくれるよ」

 そして、アズ−ルはデビルの居城へと飛び立つ。
「タケル、先に行くぜ」
 アズ−ルの表情には、未来への希望が顕われていた。

 それぞれの思いの力で紡がれてゆく時の糸。
次界卵の目覚めは間近。この争いの後にはいったい、何が残るのだろうか。

 きらびやかな万華鏡の空間が広がっている。
虹と同じ光の組み合わせで作られた世界に、
傷だらけのタケルがひとり、膝を抱えて座り込んでいた。

 タケルと光のほかには、何もない世界。
話し声も雑踏も無いこの世界に、タケルが鼻をすする音だけが響く。

 タケルは静かに泣いていた。
タケルの視界にある、万華鏡の景色が何度くり返されても。
やわらかい黄金の光がタケルを包み込み、身体の傷を癒しても。
タケルはただ、静かに涙を流していた。

 うつむいているタケルの後ろにうっすらと、
互いに向かい合うアズ−ルとコーラルの姿が映る。
何かを話しているアズ−ルとコーラル。だがその声は聞こえずに。

 やがて万華鏡の世界からアズ−ルの姿が薄らいでいき、
アズ−ルと対称になるように、コーラルの姿がハッキリとしたものになる。
 世界からアズ−ルが消えたことを見届けたコーラルは、タケルの方を振り向いて。

「タケルちゃん」
 タケルの肩がピクッ、と動く。だが返事は無くて。
 コーラルはタケルの目の前に回ると、下からタケルの顔を覗きこむ。
「タケルちゃん」
 目を潤ませたタケルが、ゆっくりと顔をあげる。
「コ−、ラル?」
 精気のこもらない声で、ゆっくりと答えるタケル。
コーラルは笑顔のままで手を差し伸べる。
「タケルちゃん、お迎えにきたよ。デビルを倒しに行こう」
 一瞬、ハッとするタケル。しかし、すぐにまた俯いて。
「もう、いいよ……」
 ピタ、と止まるコーラルの手。
「タケルちゃん?」
「もう、ダメなんだ……」
 うつむいたままのタケル。沈黙だけが流れて。

 コーラルはそっと目を閉じ、両耳にやさしく手を当てる。
「タケルちゃん、聞こえる?」
 えっ、と驚き顔をあげるタケル。
「カンジーちゃんがね、タケルちゃんのこと呼んでるよ」
 タケル、信じられない。といった顔で。
「カンジーちゃんだけじゃないよ。みんなが、タケルちゃんのこと呼んでるんだよ」
 一瞬たった後、ぎゅっと目をつぶるタケル。
険しい表情は、だんだんと穏やかなものへ、笑顔へと変わってゆく。
「……本当だ」
 笑みを帯びた顔をあげるタケル。
コーラルはタケルにほほえんで。
「それにね、お兄ちゃんも呼んでるんだよ」
「アズ−ルも!?」
 驚きのあまり、大声を出すタケル。
「お兄ちゃんね、未来を見はじめたんだよ。」
 またにっこりと笑うコーラル。タケルもつられて笑う。
「そうだよな。未来を見なきゃな」
 タケルの身体が黄金に輝きはじめる。
黄金の光は万華鏡の世界全体に広がり、全てを白く覆い尽くした。

 御神籤仙人の神社にある、横たわったタケルの身体も黄金の光に包まれる。
 タケルを覆う黄金の光は、ヘッドロココより受け継いだ聖シンパシーの力、
武装翔束を再びよみがえらせる。
 目を覚まし、立ち上がるタケル。
「タケル」「タケルくん」
 ゼウス、ポーチ、ロココが驚いた声で呼びかける。
「アズ−ルは!?」
 タケル、焦っているかのように。
「おそらくは既に、デビルの城に着いておるじゃろう」
「よし、追いかける」
 翼を広げるタケル。
「無茶だタケルくん!城はカオスに包まれているんだぞ!」
「そうよ!それに少し待てば、この月も城の中に突入できるのよ!?」
 あわてて止めようとするロココとポーチ。しかし、タケルは聞かずに。
「早くしないと、アズ−ルが危ないだろ!」
 言い終わらないうちに、月を飛び出していったタケル。
 残されたゼウスたち。しばらく沈黙が流れたあと、真剣な表情で口を開く。
「きっかり、3分だったわね……」
「うむ……」

 カオス色の空が広がる聖魔和合界。
 月から飛び出たタケルは、デビルの城へと突入する。
「バカラ、見てくれてるか?オレ絶対負けねぇからな」
 タケルの身体はカオスを突き破り、城へと近付いていく。
「カンジー、聞こえるか?オレ絶対、あきらめねぇからな」
 目の前につづく暗闇の中を、タケルは進み続ける。
「アズ−ル死ぬな!アズ−ル……オレに力を分けてくれ!!」
 長い長いカオスのトンネル。
 それを突き抜けた先に、デビルの城が見えた。

作成日:Christian Era 2005 21th August

 今回のお話のテーマは「タケルが復活するまでの3分間」でした。
 んまぁ端的に述べますと、
「武装翔束の力に見放されたからデビルに簡単にやられちゃったのに、
 傷だけ治しても仕方ないじゃんかよコーラルさん!」
 と言ったところでしょうか。
 ともかく、心の力である聖シンパシーの力を
どうやってタケルに取り戻させるかが今回の狙いでした。

 聖シンパシーの力を失った理由に関しては
35.1話 カリスマデビル、非情な計算!のウワサ
にて妄想を展開させておりますゆえ、御覧戴ければと思います。

 話は変わりますが。
 実はこの話、最近になってようやくまとまった物なのです。
(もちろん今までに発表した話も最近できたものが多いのですが)
 この話はずっと前から考えがありながら、
話にすることができなかったものでした。

 理由は「タケルにどうやって心の力を取り戻させるか」について
悩んでいたからなのです……

 52話のラストでタケルとカンジーが再会するシーンを見ると、
タケルは「カンジーが戻ってくることを知っていた」と推測できます。
 また51話にて聖シンパシーの力を失った直前に
カンジーが殺されていたことから、
タケルが聖シンパシーを失った理由は、カンジーに関係していたと推測できます。
 これらのことから、タケルが聖シンパシーの力を取り戻すためには、
「カンジーがまだカオスの中で生きていること」を
タケルが理解する必要があったと、牧波さんは考えたのです。

 うん、ここまでは良かったのです。
 しかし、ここからが問題でした。

「どうやって、タケルに教えようか?」
 このことに、長い間悩んでいたのです。
 ゼウスは役にたたないし、ロココもダメだし、ポーチは覚醒していないし……
といった感じで。  今思えば、夢の中でカンジーと会話させとけば良かったかな、
なんて思ったりもするのですが。

 きっかけは、某同盟でのチャットでした。
 牧波さんはコーラルのことが嫌いでして。その時も相手の方に、
「コーラルは小姑ってカンジであんまり好きじゃ無いんですよ(意訳)」
 と愚痴を吐いた(最悪ですな)ところ、その方が
「あの兄妹は51話だけしか会えなかったんだよね」
 ということを教えてくれまして。
 それを聞いた牧波さんの脳は
「なんてかわいそうなのコーラル!
→それなのにいつも笑顔ですごいよコーラル!
→コーラル尊敬するよ!コーラル大好きだよ!!」
 こういった思考をたどった訳でして。

 とまぁ、こんなこともあってコーラルのことに着いて考えはじめた牧波さんは
ためしにこの話にコーラルを混ぜてみましたのですが。
 するとどうでしょう。面白いほどにピッタリとはまったんですよ、コーラルが。
 驚きました。まさかまさか、あのコーラルがキーパーソンだったなんて。
 もし昔のままコーラルが嫌いだったら、
この話は永久に脳内蔵入りだったと思います。
 コーラルの魅力を教えてくれた王様に、改めて感謝の念を送った夏の日でした。

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